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中国整体療法がなぜ痛みを取るのか

 当院で行っております中国整体療法は、師匠である中国人医師林先生の指導を受けたもので、体のバランス異常を改善することで、痛みやしびれ、機能障害の改善を図るものです。

 この中国整体療法を理解していただくためには、まず関節のズレというものを理解していただく必要があります。

 体の歪みは万病の元と言われています。人間の体は非常に精巧にできており、どこかに歪みなどの問題が起きると、それを他の部分が補うようにできています。そのため、少しぐらいの歪みが生じても、すぐには痛みなどの症状は起こりません。しかし、だからといって歪みを放っておいても良いということではありません。

 例えば、足首を捻挫して、うまく歩けなくなっても膝や腰などが、足首の負担を緩和するように働きます。そして、捻挫の痛みもなくなれば、完治したということになるのですが、多くの場合、足首の痛みは取れても、足首の硬さ(柔軟性)が残ってしまうのです。すると、腰や膝は足首の硬さをカバーするように、余分に力を入れたり、片側に負担をかける歩き方を自然に行います。

 こうした負担は、すぐには症状として現れません。本人も気づかないうちに、徐々に疲労が蓄積され、数年後、数十年後の単位で、腰や膝の痛みとなって出てくるのです。これは、捻挫などのはっきりした原因がなくても、日々の生活の中でのクセ、例えば、足を組んで座るとか、常に左に体を捻りながら仕事をしているなどの生活習慣によっても起こります。

 普段と変わらない生活をしているのに、突然、腰が痛くなったとか膝に痛みが走るようになったというのは、日々の疲労の蓄積が支えきれないほど溜まってしまい、ついに痛みとなって表れたということです。

関節のズレ.png

 具体的に関節のズレを説明しますと、左側の関節図は正常な状態を表しています。それに対して真ん中の関節は、完全に外れた状態になっており、これを脱臼と言います。脱臼の場合は、関節を元に戻さないと動かすこともできません。

それに比べて右の関節は、正常ではないものの少しのズレであるため、関節を動かすことは可能です。ただし、正常なかみ合わせではないため、動かす度にカクッと音がしたり、痛みや違和感が生じます。この状態がズレ(亜脱臼)です。

こうしたズレを放置したまま、長い間関節を使い続けると、関節を支える靭帯や筋肉および軟骨に負担をかけ、炎症が起きて痛みを発症するのです。

 病院での治療は、関節のズレを矯正する方法がないため、痛みを発症している筋肉や靭帯に対して消炎剤や痛み止めによって症状を抑え、ズレたまま関節が固定されるのを待ちます。うまく体がズレに順応し固定できれば痛みは治まるということです。

 ただし、痛みは治まっても関節のズレはそのままですから、関節に負担をかけると、痛みは再発しやすくなります。「腰痛や捻挫はクセになる」といわれるのは、そのためです。

 また、関節にズレがあっても、悪いなりにバランスをとれる(歪みを補正する能力が高い)人は、すぐには痛みなどの症状を感じません。しかし、歪みが大きくなり、補正できなくなると、突然、大きな痛みを発症することが多いのです。

 このバランス補正能力には、2つのポイントがあります。ひとつは柔軟性、もうひとつは筋力です。

 筋肉や関節の柔軟性が高いと、体に歪みがあってもうまくバランスを調整できます。ストレッチなど柔軟性を高める運動で腰痛を治すという教室がありますが、これは体の補正能力を高めて症状を改善しているのです。

 同様に、筋肉を鍛えて腰痛を治したという方もおられます。上手に筋肉を鍛えれば、筋肉の強さで体の歪みを支えることができるようになるからです。

 ただし、柔軟性も筋力を鍛える運動も、正しく行わないと、かえって関節を痛めることもありますから注意が必要です。また、体の柔軟性や筋力は、老化と共に衰えていきますので、継続することが大切です。

 整体治療は、体の補正能力に頼るのではなく、歪み自体を治してしまうことで痛みを取るという治療法です。

 ズレを矯正するには、まず、どの関節が、どのようにズレているかを、自覚症状や触診によって正確に診断する必要があります。当たり前のことですが、正しい診断ができなければ、正しい治療はできません。

当院では、ズレの状態を患者さんに、できる限り詳しく説明するようにしています。なぜなら、ズレの状態に応じて、患者さん自身がするべき体操や、注意事項が違うからです。せっかく矯正治療によって、関節のズレを治しても、間違った生活をしていると、すぐにズレは戻ってしまいます。患者さん自身が、自分の体のバランスを知り、正しい養生をすることが重要なのです。

 また、治療後1~2日間矯正部位に違和感が出たりしますが、これは、体が正しい位置に慣れていないために生じる反応ですから心配はありません。

 多くの場合、治療した時点で症状が楽になります。ただし、それで完全に治ったとは言えません。せっかく正しい位置に入れた関節が、元のズレた状態に戻ってしまうからです。歪んだ状態で長い間過ごしてきた体は、その状態こそ正しいバランスであると認識しています。先ほど説明した体の補正能力が、むしろ災いして、安定していた歪んだバランスに戻してしまうのです。

だから、本当に正しいバランスを体に教え込む必要があるのです。ズレを治すよりも、正しい位置で安定させることに時間が必要なのです。

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